特注で様々なサムフックを作ってきましたが、今回のは少し変わっていました。困っている方のお役に立てばと、依頼者の承諾をいただいてご紹介いたします。

　ご依頼があったのは、バリトンサックス用です。ご注文のショートタイプをお送りしましたが、使えそうもないので返品したいとのご連絡で左上の写真が添付されておりました。ご依頼者のホールドの位置はこのような感じだそうです。親指の位置が止めネジの端に掛かってどうにか管体を支えているような状態です。全くフックは役目を果たしておりません。30年近くも悩んでいらっしゃったようです。もちろん返品OKですが、この状態で使えるフックをデザインしたいのですがと暫くお時間をいただきました。も少し詳しく知りたいので、他の写真も送っていただき説明も受けました。先ずフック部を１cm 外に出し、更にネジのところまで下げ、管側に曲げます。また、親指の先が止めネジに当たり痛いということで、ネジの横に３mm の真鍮板をロウ付けして斜めに削り、段差を無くすようにします。早速デザインを起こしてメールで図面を送ります。プリントしたものを厚紙に貼っていただき、簡単なダミーで試してもらいます。気に入っていただけたようです。右上の写真がそうです。ダミーより2〜3mm フックを下げた方が良さそうです。どうでしょうか…。

　『まず、指が届きます！初めての感覚！親指が管体裏側に回るようになったので、他の指のグリップが良くなりました。特に薬指・小指は握るように押さえられるようになり、かなり楽になりました。これまでキー側の指は完全に伸ばして押さえるしかできなかったのですが、指を丸くして指先の腹で押さえることも可能になりました。右手が開放の運指のところは、親指が届いているとすごく安定しますね（当たり前ですが）。手が届かないからと欲しかった楽器を諦めたり、買った楽器を手離したりした人を何人か見てきました。バリトンあるあるだと思っています。ぜひぜひHPで紹介してください！』サムフックでお困りの方はどうぞご相談を。