有楽町のママ、八重洲のママ、黒人客の多かった銀座の69、渋谷百軒店の小劇場みたいなオスカー、小さなお店のアリンコ、ブルーノート、新宿にもあったディグ…ずっと昔にみんな無くなってしまいました。どこも亭主の道楽みたいなもんで、膨大な LP のコレクションとでっかいスピーカー、真空管のアンプ…たばこの煙とコーヒーの薫りが入り交じった薄暗い中にモダンジャズが流れて、日常を離れた違う世界に包まれているようなとても具合のいい空間なのでした。
よく通っていたのは有楽町のママです。素敵なマッチ箱と灰皿の乗った小さな木のテーブルに硬い椅子、みんな奥のスピーカーに向いて、目つぶって首振りながらジャズを聴いております。お話ししてはいけません。このお店は一時間経つとコーヒーは?って聞きにきます。追加注文しないと出て行かなくてはなりません。ジャズバーにも行きました。新宿二幸裏のアカシヤは、いつ行ってもカウンターの花瓶にきれいなバラがありました。カウンターの後ろには穴が空いていて隣のレストランと繋がっています。ナニか注文するとのれんが開いて、穴の向こうからお料理がでてきます。新生吸いながら、コークハイ一杯で長い時間頑張っておりました。
なふうにジャズ沢山聴いたんですが、あまり曲名とかプレイヤーの名前は知りません。それほどマニアでもなかったし、今のように情報があふれている訳でもありません。サックス始めてからそんな知識も欲しいなって思っていたんですが、ちょうどブルーノートという有名なジャズレーベルのベストコレクションというのが解説書付きで発行されました。トランペットのマイルスデイビスから始まって隔週で全 70 号だそうです。先日届いた3つ目がソニーロリンズでした。なんか懐かしく、改めて手元にある MJQ との共演を掛けてみます。ロリンズのテナーとミルトジャクソンのヴァイブ、ジョンルイスのピアノ…ああ、これってジャズ喫茶の音だ。たばことコーヒーとジャズ…よかったな〜…。ソニーロリンズのテナーサックスは、ジャズ喫茶にとても合うのです。
昔々、オジさんにも青春の時はあったのでした…そうだ…あったんだ…。 |