手元の握りを藤の皮で巻いた、釣り竿と切り出し小刀です。藤巻きの握りって、とても塩梅がいいですよ。
むかしむかし、オジさんはヘラブナ釣りに凝っていました。ナカナカ微妙な釣りでありまして、のめり込む要素がたくさんあります。釣りそのものは無論ですが、道具類がとてもいいのです。以前に書きましたへら浮き、それに竿置き、小道具箱…他にもいろいろ作りましたが、さすがに竿までは手が出せません。縦に並んでいるのは釣り竿の握り手の部分で、ある方に頂いた「おくだ」というへらの銘竿です。今はもう竹竿は使わないのかな。何十年も前の、十三尺と十四尺の竿です。ずいぶん使い込んで握りの藤巻きの漆は大分はげていますが、とてもきれいな竿です。これは最初から藤が巻いてありました。一番下の五寸七分ほどの小刀…これ何センチなんてのは似合いません…「うぶけや」という日本橋人形町の刃物屋さんで打ってもらいました。図面を持ってお店に相談に行きましたら、快く受け付けてくれました。自分だけの小刀です。出来上がった時にはとても嬉しかったですよ。上の二本は、日本橋三越の前に店を構える「木屋」という刃物屋さんで見つけた小刀です。この小刀は鯉と鮎を形にしたもので、一目惚れして買ってしまいました。三本とも、ずっと昔のことです。うぶけやさんで打ってもらった小刀はすぐに竿をまねて藤巻きしましたが、木屋さんのは新しく巻いてみました。1ミリほどの藤皮が釣り具用で手に入ります。ちょっと飾りを入れて、いい具合です。
竹と藤、鉄と藤、それに漆、趣がありますね。こんな事やっているのが一番楽しいです。 |